山口土下座 『おわび』

 
 
――さて、話は数か月前にさかのぼるわけだ


「おれはもう、音楽をやらない。引退しようと思っている」
と、やつから電話がかかってきた

もっとも、やつから<もう音楽はやらない>という言葉を聞いたこと、
過去思い出せるだけでも数回におよぶ

長い付き合いを経てきたからこそ言えることだが、
やつの「音楽やめる」は、イコール「すこし時間を取って己に向き合ってみる」という意味である
(べつに茶化してるつもりではなく、音楽活動を再開するたびに一皮むけて、
 一歩進歩した彼の音楽に触れては、うれしく思ったものです)

なので、今回も(また言ってるなー)と心には思いつつ
「まーしばらく休息期間にして、また気が向いたら再開したら、、、」
などと口では軽く答えたものだが、心の底では何かしら引っかかるものがあった

どういうことかというと、「引退」なんて改まった言葉をやつの口からきいたのは、
自分の記憶している限り、初めてだったので

たかが言葉、されど言葉でもある
微妙な言い回しの陰にひそむ本質を見落としてはならない

「引退」なんていう、かしこまった言葉を使うのは、
もしかしたら、それなりの覚悟があってのことかもしれない

やつの生活その他もろもろ、身の回りの環境がガラリと変わったことは知っていたので、
(それは変化というより、どちらかというと一方通行の変容・変質と言える種類のものだ)
もしや、、、と気をもむ日々を、イマハシは過ごしていた



 ~  ~  ~  ~  ~ 


月日は経って、秋も深まった11月の終り

前触れもなく、
やつから、ふたたび電話が掛かってきた

いわく、


「おれ、CD作ったんよー!」



ん!?



なんて言ったかスマン聞こえんかった、と思わず聞き返した(本当に)
それも止むを得まい

フッ、、、意表をつかれたな


(「録っとるじゃねーか!」とか、心の中でいろんなツッコミを入れた)







===============

そして

12月になって、すっかり冬めいてきた頃、ヤツから1枚のCDが届いた
すなわち!

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山口土下座
やめるやめる詐欺vol.1 ご来場記念CD
『おわび』



封筒をあけて、このCDのジャケットを見た瞬間、
おもわず、ズッコケそうになった

周囲にも引退を公言したその挙句、
引退撤回をイベントにまで昇華したのだね


フッ、、、意表をつかれたな(2回目)






 ~ ~ ~ ~ ~

CD収録曲について

まじめな話、内容はキチンとしています
どころか、とてもクオリティが高い!

ギター+歌を主軸にして、その周りにウッドベースやパーカッションなどの楽器を配した、
おそらく一発録りと思われる2曲構成の作品です

どちらの曲も、あくまで淡々と歌・演奏が繰り広げられて、落ち着いて滋養に満ちています
一部のジャグでみられるような負の部分――鼻につくような和気あいあい感――は微塵もなく、
この楽器編成でここまでシンプルかつ深い演奏ができるなんて、大したものだなと深く感じ入りました




◇1曲目「それで大丈夫だよ」

はた目から見ると結果的には「活動休止」だったふうにも映るが、
本人としては一大決心での、本当の引退だったのかもしれない

復帰後に録音されたこの曲は、
「手放したからこそ得られた」心の在り方が紡いだ、大切な言葉で満ちています
言い換えると、手放さなければ自分の血となり肉とならなかったであろう言葉が

寒くて凍えそうな冬の朝にふんわりと羽織ったコートのような、
暖かい安心感をあたえてくれる歌です

音は、ウッドベースのメロディが柔らかくて特に心地よいです
彼の歌声によくマッチしてると思います



◇2曲目「また会える日まで」

これはすばらしい名曲だと思います

悲しみを乗り越えて、いろんなことを通り過ぎて、それでも前に進んでいくよという、
主人公の(決して気負っていないけれど)力強い決意に、心をうたれました
歌詞の言葉を借りるなら、「夢の続きを見に行こうよ この夜を越えて」
シンプルだけれども、うそ偽りのない、
心にじんわりと染みこんでくる素朴な言葉だ

メロディーも素敵です
これはここでは説明しないので、なんとかしてCDを手に入れて実際に聴いてみてください


それから、女の子のコーラスの絶妙な重なり具合・引き具合がいいスパイスになってて、
とても好感が持てます
 
 
 
 

 
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by dolmens | 2015-12-07 18:45 | ◆ 音楽と僕ラ (メイン) | Comments(0)  

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